VERITAS INVESTMENT
マンション経営・不動産投資をゆっくり知ってじっくり考える
ヴェリタス・インベストメントの[マンション経営ラウンジ]
0120-177-732お電話受付10:00~19:00(平日) 各種お問い合わせ

一歩先行く不動産投資 プロフェッショナルズアイ

yoshizaki

不動産エコノミスト 吉崎 誠二(よしざき せいじ)
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長を経て現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、全国新聞社、地方新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。 http://yoshizakiseiji.com

【第19回】データで解説! 「いまが買い時?」投資用マンション価格は今後も上昇の可能性あり?

2023年11月

 マンション価格の上昇が続いています。実需(=自己所有・自己利用)マンションだけでなく、ワンルームタイプあるいはコンパクトタイプが中心の賃貸目的のマンション(=投資用マンション)価格も同様に上昇しています。

指数でみる新築マンション価格上昇の現状

 首都圏全体でどれくらい価格上昇しているのかを各指標でみてみると、例えば東日本レインズの毎月の成約㎡単価データでは、2013年初頃を100とすれば2023年夏は170~180程度、国土交通省の不動産価格指数では、2010年平均を100とすれば190前後となっています。
 多少大袈裟に言えば、「マンション価格はここ10年で約2倍になった」という状況で、戸建価格も多少上昇していますが、それでも同期間で1.2~1.3倍程度ですからマンション価格の上昇が顕著な事が分かります。

マンション価格動向は中古物件で判断

 先に述べた、2つの指標・指数は、ともに中古マンション成約価格を基に算出されています。
 長く「新築志向」が強く残る我が国では、「マンション価格=新築マンション価格」のイメージが強く、メディア等で報じられる「マンション価格」の多くは、「新築マンション価格」となっています。しかし、マンション価格の動向は、デベロッパーの意向や立地による価格変動がある新築マンションでは実際の状況はつかみにくく、中古マンションの成約価格動向で判断するのがスタンダードです。そのため公的機関やシンクタンクが公表している指標のほとんどは、「中古物件」の「成約価格」を基にしています。
 一方で、「マンション販売動向」などは、新築マンションのデータを用いるのが一般的です。マンションの売れ行きを示す「初月契約率」は新築マンション販売状況です。ちなみに、「販売の好調・不調」の判断基準は初月に70%を超えるかどうか、とされています。

なぜ、マンション価格は上昇しているのか

 では、なぜマンション価格は上昇しているのでしょうか。
 不動産に限らず、ものの値段が上がる主な要因は、「原価があがる」か「需要が供給より多い」かの2つです。
 たとえば、我が国では22年半ばから食品などを中心に多くの物の値段が上がりました。食品の原材料などは海外からの輸入依存の高く、海外でのインフレと円安が進んだことで原材料費が上昇、それに伴い多くの値段が上がりました。しかしデータで見れば、国内の需給のバランスを示す、需給ギャップ(日銀がデータ公表)は23年上期まで(執筆時11月22日までの最新データ)マイナスが続いています。一方、企業間取引の価格を示す企業物価指数は、23年に入り多少落ち着きましたが、22年の年間を通じて10%前後の伸びを示しました。つまり需要が旺盛で価格が上がったというよりは、原材料(コスト)が上昇して価格に転嫁せざるを得なかったということになります。

 では、なぜマンション価格は上昇しているのでしょうか。
 新築マンションでは、先に述べた2つの要因「原価が上がる」と「需要が供給より多い」の2つの可能性があります。一方、中古マンションは、「原価が上がる」はありえませんので、「需要が供給より多い」で決まる事になります。

 まず、需給のバランスですが、実需・投資用とも新築物件の供給量が少ない状況が続いており、その中で一定の需要があることから、価格上昇につながっています。
 次に、「原価が上がる」という要因ですが、新築マンションの原価は、「土地価格」と「建築費」ですが、このうち土地価格は、すでにコロナ禍前の上昇率に戻っています。加えて、マンションに適した用地(=適地)不足のため入札が厳しく、このことも土地価格上昇に拍車をかけています。

建築工事費はさらに上昇の可能性

 下図のように、建築費は2013年頃から上昇を続け、21年に一気に上昇、このところは、上昇スピードに歯止めがかかってきたものの高止まりがつづいています。

 図は、国土交通省が公表している「建築工事費デフレータ―」の2016年からの推移です。(2015年の平均を100として計算:「住宅総合」の数字をグラフ化しています)。

 建築工事費は、今後さらに上昇する可能性が高そうです。その要因としては、まず、輸入建築資材の価格上昇気配があります。多くの建築資材を輸入に頼る現状のため、現在のような円安(執筆時のドル円相場は1ドル=148円台)が続けば、この先の価格上昇は避けられません。(逆に円高になれば、輸入資材価格は下落の可能性もあります)
 次に、輸送コストの上昇は避けられそうにありません。建築現場まで建築資材を運ぶ費用などが上昇しています。物流に携わる方々(ドライバーなど)の人件費が大きく上昇しており、2024年4月からはドライバーの労働時間(残業時間)の上限が決められ、人手不足も深刻になることは確実視されており、人件費の上昇、そして輸送コストはさらに上がると思われます。
 さらに、建設工事費の上昇に拍車をかけることになりそうなのが、「建設業界の2024年問題」と言われる、24年4月から働き方改革による残業上限規制が施行されることです。ドライバーや医師とともに、建設業労働者も5年猶予されていた働き方改革が適用されます。これにより建設業就業者人件費がさらに上昇する可能性が高まっています。ただでさえ人手不足が深刻のため労働人件費が上昇、残業を依頼することもできなくなり工期が伸びることで、結果、工事費の上昇は確実と思われます。

まとめ

 投資用の新築マンションの購入に際して、少し価格が落ち着くのを待っている方も多いようですが、ここまで述べたようなことから考えれば、まだしばらくは(予測ができる少なくとも数年間は)、新築マンション価格の高止まりは続くものと思われます。

最新のコラム

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
吉崎 誠二(よしざき せいじ)

「将来世帯推計」で見る、今後の賃貸住宅需要の変化 new 「将来世帯推計」で見る、今後の賃貸住宅需要の変化

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
吉崎 誠二(よしざき せいじ)