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ファイナンシャルプランナー 大竹 のり子(おおたけ のりこ)
編集者を経て2005年4月に女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。 現在、雑誌、講演テレビ・ラジオ出演などのほか、女性FPによる個人マネー相談や人生の“やりたい”を“できる”に変えるための「お金の教養スクール」を運営中。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)『老後に破産しないお金の話』(成美堂出版)など著書は70冊以上に及ぶ。https://www.fpwoman.co.jp

【第7回】「住む視点」と「貸す視点」はここが違う

住居としての不動産は誰にとっても身近なものですが、不動産投資となると、「住む」のではなく「貸す」という視点で不動産と向き合うことになります。今回は、「住む」のと「貸す」のとでは不動産に対してどのように異なる視点が必要なのかを解説します。

■「住む」ための不動産選び、何を重視する?

皆さんは、自分が住むための不動産を選ぶとき、どのようなことを重視しますか?買うのか、借りるのか、マンションなのか、一軒家なのかといった状況によって違う点もありますが、共通しているのは、居住の快適さなのではないでしょうか。

まずは間取りが、家族構成や生活にフィットしているか。内装が自分の好みに合っているか。最寄り駅や路線、コンビニ、スーパー、保育園や小学校・中学校までの距離といった立地もしっかり確認したいところですね。

特にマイホームを購入するとなった場合、外観や内装、設備に対するこだわりは大きくなりがちです。モデルルームに見学に行って、壁や床の素材を選んだり、水回りを人工大理石に変更したり、食器洗い洗浄機や床暖房をつけたり、間接照明を設置したり……。一生に一度の買い物ですから、予算との折り合いをつけながらも「快適なライフスタイルを実現したい」と考えるのは当然のことです。

■「貸す」ための不動産選びは、利回りが重要

一方、貸すための不動産選びはどうでしょうか。もちろん、立地が重要であることは変わりありません。ただし、ひとくちに立地といっても「自分にとって便利かどうか」と「借りる人にとって便利かどうか」では少し目線が異なります。1Rや1LDKといった間取りの投資用マンションであれば、保育園や小学校が近いかどうか、学区がどこになるのかといったことはあまり重要ではなくなります。その代わり、コンビニに加えて、カフェやお弁当屋さんなどが近所にあることが大きなプラスポイントになるかもしれません。

内装や設備についても、借り手がつきやすいという意味では、当然、充実しているに越したことはありませんが、「自分の好みに合っているかどうか」はあまり重要ではありません。むしろ、内装の好みは人それぞれですから、自分がよいと思ったデザインでも、他人は「もっと一般的な内装のほうが落ち着く」と感じる可能性もあります。設備についても、料理をしない人であれば食器洗い洗浄機は不要でしょうし、お金をかけて充実させても、それが必要か不要かは人によって異なります。

一方で、貸すための不動産選びにおいて特に重要なのが、「利回り」です。利回りとは、物件の購入価格に対する、年間に得られる家賃収入のこと。利回りには大きく分けて、経費などを考慮しない「表面利回り」と、管理費や修繕積立金、固定資産税などの経費を考慮した「実質利回り」がありますが、どちらも高いに越したことはありません。むしろ利回りが低いと、せっかく「投資」をしているにも関わらず、収益が得られないということになってしまいかねません。住むためではなく、貸すため、つまり「投資」のために不動産を購入するのですから、最終的な収益が少しでも多いほうが「よい投資」と言えるのです。

例えば、立地がよければ、家賃を多少高く設定できたり、空室になりにくかったりしますが、その分、購入時の物件価格が高ければ、利回りが低くなってしまうので、結果的にあまり意味がありません。内装についても然りです。「自分が住むわけではない」という前提を忘れずに、「利回り」という視点から、冷静に物件を取捨選択することがとても重要と言えます。

■ローンの違いにも注意しよう

住むために不動産を購入する場合と、投資用として不動産を購入する場合では、ローンの種類が異なるという点にも注意が必要です。自分の住居として不動産を購入する場合には、住宅ローンを組むことになります。住宅ローンは一般的に金利がかなり低く抑えられており、かつ、多くの場合、住宅ローン減税も受けることができます。

一方、投資用として不動産を購入する場合には、一部の賃貸併用住宅等を除いては住宅ローンを利用することはできません。アパートローンと呼ばれる、「投資」のために不動産を購入する人の専用のローンを組むことになります。ちなみに、名称に「アパート」とついていますが、1棟アパートを購入する場合だけでなく、区分マンションを購入する場合でも利用できます。

アパートローンの金利は金融機関によって異なりますが、住宅ローンに比べると高くなっており、住宅ローン減税も受けることができません。こうした点も踏まえながら、「投資」として妥当かどうかを判断していくことが必要です。

■「住む」ための不動産でも「貸す」視点を持とう

ここまで不動産を購入する場合の「住む視点」と「貸す視点」の違いについて解説してきましたが、実は「貸す視点」は、住むためにマイホームを購入する場合においてもとても重要な視点です。なぜなら、長い人生、どのような事情で再び転居することになるかはわからないからです。もし将来的に住まなくなった場合に、「貸し出して家賃を得る」という選択肢がとれることは、マネープランやライフプランの柔軟性につながります。そういった意味でも、不動産投資をする際はもちろん、マイホームを購入する際においても、「貸す視点」を持っておくことをおすすめします。

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不動産エコノミスト
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